不定期連載 OSD事務局マネの『長い自己紹介』第3回 | 一般社団法人OSDよりそいネットワーク

不定期連載 OSD事務局マネの『長い自己紹介』第3回

第3回 兄の近況

 ひきこもり当事者や家族のみなさんが集まる場で “93歳要介護4の母とひきこもり歴32年の兄がいる” と自己紹介すると、その場にいるみなさんはほぼ固まってしまうのだが、おかげさまで兄は “元” ひきこもりになり、今は元気に暮らしている。 

(2019年5月の庭の様子)
(2021年10月の様子)

 元気になってからの兄が何をしているかというと、園芸。1枚目が2019年5月の庭の様子。2枚目が2021年10月の様子。ひきこもりに興味のない人にとってはただの庭の写真でしかないが、お悩みの親御さんや支援関係者のみなさんはびっくりされるのではないだろうか。

 たまに実家に帰ると、いろんな花がきれいに咲いているので俺もびっくりする。弟の記憶のかぎり兄が庭いじりしている姿を見たことがなく、一体どこで覚えたのか不思議でしょうがない。

 庭の手入れは父がマメにしていたのだが、2017年2月に死んでからは荒地になっていた。その後何を思ったのか兄が種や苗木を植えるようになり、近所の奥様方が通行人を装って見に来るような状況になっている。軽く挨拶して二言三言言葉も交わすようだ。春から秋にかけては晴れた日はほぼ毎日庭に出て何かを植えたり手入れしたりしているそうだ。

 ちゃんと確かめていないのだが、ある日雑草が生い茂る状態を見かねた近所の奥さんが草むしりをしてくれたらしい。そんなことを50年来のお付き合いがあるお隣のご主人から手紙で教えていただいたりもする。ここ何年かはお隣の方から兄の様子や父のことが書かれたお手紙を送っていただくのが楽しみになっている。

 昨年8月に妻と帰省した際に「◯◯(妻の名前)さんが庭見たいって言ってんだけどいい?」と兄に聞いたら「切った枝が落ちてるから足元気をつけて」と妻に優しく答えた。無愛想な兄だが、兄らしく振る舞いたいのか妻には愛想がいい。コノヤロウ。

 元旦に帰省した時も機嫌がよかった。毎日楽しそうである。以前より声も若返っているような気がする。

 弟としては事の真相を知りたいという気持ちがあったが、今の兄の姿を見て、それもどうでもよくなってきた。まあ知りたいと言えば知りたいのだが、今は余計なことを言ったり聞いたりして良好になった兄との関係を壊したくないという思いの方が強い。

 兄が今やっていることについても口を出したことはない。感想も言ったことはない。帰省した時も最低限の用事の話をするだけだ。それで充分意志の疎通は取れている。

 雪国なので冬の間は作業ができないのだが、実は家の中もすごいことになっていて、どうすごいかは俺の言語力では説明が難しい。ここで公開したいところだが、それは僕の講演会に来てくださった人だけにお見せすることにしている。あしからず。